こんにちは。山口県長門市にある歯医者「田中歯科医院」です。
唾液を調べるだけで、ご自身の「虫歯リスク」が分かることをご存じでしょうか。世の中には、虫歯になりやすい方とそうでない方がおり、その違いはお口の中における環境の差によるものです。そのため、虫歯予防のためには歯磨きだけでは不十分で、ご自身に合った虫歯予防の手段を身につける必要があります。
唾液検査から自分の虫歯リスクと気をつけるべき要素を把握することで、自分のお口に合った効果的な虫歯予防に役立てられるでしょう。
今回は、歯科医院で行う唾液検査の流れや検査でわかることを解説します。よく虫歯になるという方や効果的な虫歯予防の方法を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
虫歯の原因
「甘いものを食べると虫歯になる」とよく耳にしますが、実は虫歯になる原因はそれだけではありません。虫歯は「歯の質」「虫歯菌」「糖」の3つの要素が重なった状態のまま、時間が経つことで発生します。
歯の質
歯の質が弱い方は虫歯になりやすく、逆に歯の質が強い方は虫歯になりにくいです。歯の質の違いは、体の中で最も硬いといわれる歯の表面のエナメル質の硬さの違いで異なります。エナメル質をはじめとする歯の組織の状態(歯の質)は、個人差があるのでご注意ください。
歯は、母親のおなかにいるときから、小学校低学年になる時期までを通して形成されます。そのため、歯が育つ課程における環境の違いによって、生まれつき歯の質は異なるのです。さらに、生えたての歯は共通して表面のエナメル質が弱く、虫歯になりやすい特徴があります。
歯の質は食生活やフッ素を取り入れることで改善できるため、丈夫な歯をつくることが虫歯予防につながります。
歯の質を高める方法の具体例は、以下のとおりです。
・フッ素入り歯磨き粉を使用する
・歯科医院でフッ化物塗布を行う
・タンパク質、カルシウム、リン、ビタミンなど歯の育成によい栄養をバランスよく摂る
虫歯菌
虫歯は、プラーク(歯垢)中にいる虫歯菌が出す酸によって歯が溶かされて起こります。
プラーク1mg中には1億個もの細菌がいるとされ、ミュータンス菌やラクトバチラス菌が虫歯の進行に大きく関わっています。そのため、毎日の歯磨きでプラークを除去し、お口の中の細菌数を少ない状態に保つことが虫歯予防には有効です。
糖
虫歯菌は、食べ物の糖質をもとにして酸を作り出します。特に、砂糖は虫歯菌が好むため、甘いお菓子を頻繁に食べる方は注意が必要です。
また、糖質は甘いものだけでなく、お米や牛乳、野菜ジュースなど、多くの食べ物や飲み物にも含まれています。食事や間食のあとは、歯磨きで虫歯菌の餌になる食べかすを除去しましょう。
時間
食べてから歯磨きをせずに放置していると、歯が溶けて虫歯になりやすいです。
通常、お口の中は中性に保たれていますが、飲食すると虫歯菌が出す酸によってお口の中が酸性に傾きます。酸性になると歯の表面は溶け出しますが、唾液の作用によってお口の中は中性に戻り、溶けでたミネラル成分も歯に戻ります。このように、一時的にお口の中が酸性になる分には、自然に溶けた歯はもとに戻るため虫歯の心配は少ないです。
しかし、間食の回数が多い場合やだらだらと長い時間かけて食べる場合、歯が酸にさらされる時間が多くなって、虫歯のリスクを高めます。そのため、お口の中が中性に保たれるように規則正しく食事を摂る、食後は歯磨きやうがいをすることが大切です。
こんな方は虫歯に要注意!
虫歯になる原因はさまざまな要因が重なることで引き起こされますが、特に次のような方は虫歯のリスクが高いため注意が必要です。
・小さい頃からよく虫歯になる方
・虫歯になりやすい歯だと歯科医院でいわれたことがある方
・間食が多い方
・砂糖入りのコーヒーや甘い飲み物をよく飲む方
・スポーツドリンクをよく飲む方
・乳歯や永久歯が生えたばかりの方
・口呼吸する方
・詰め物や被せ物がある方
・歯並びが悪くて歯磨きがしにくい方
歯科医院で行う唾液検査とは
歯科医院で行う唾液検査(サリバテスト)は、虫歯になりやすいかどうかを唾液を使って調べる方法です。唾液検査は、治療が目的ではなく、虫歯のリスクを知ることで患者さま一人ひとりに合わせた虫歯予防をするために行われます。
検査時間はおよそ20分程度の短時間で済み、手軽に受けられる検査です(検査結果は後日判明します)。費用は、保険適用外のため歯科医院によって異なりますが、約3,000~5,000円で受けられることが多いでしょう
唾液検査で何がわかる?
唾液検査でわかることは、以下の3つです。
①虫歯菌の数
お口の中に数多くいる菌の中でも、特に虫歯の進行に大きく影響する「ミュータンス菌」と「ラクトバチラス菌」の数を調べます。試験用の棒を舌につけて培養することで、菌の数を調べられます。
虫歯菌が多い方ほど虫歯になりやすい傾向があるため、注意が必要です。虫歯菌はプラークに含まれているため、歯ブラシのほかに、歯間ブラシ、フロスなどを併用しながら適切な歯磨きでプラークを除去する方法を身につけることが大切です。
②唾液の量
唾液の分泌量を測ることで、唾液のもつ虫歯予防への作用がどれだけ働くか調べます。
唾液には次のような効果があり、唾液の量が多いほど虫歯になりにくいといえるでしょう。
・菌の活発化をおさえる
・歯を再石灰化する(歯の表面に溶けたミネラルを戻す)
・虫歯菌による酸を中和する
・汚れを洗い流す
唾液が少ない場合は、意識的に噛む回数を増やしたり、お口の周りの筋肉をマッサージしたりすることで、唾液の分泌を促しましょう。特に、高齢者の方は唾液の分泌が少なくなりやすいため、積極的にお口を動かして、唾液腺(お口の中の唾液が出てくる入口)を刺激するのがよいでしょう。
③唾液の中和力
虫歯菌による酸を中和する能力がどれくらい高いか調べます。
唾液には歯が溶ける酸性状態のお口の中を中性に戻す緩衝能とよばれる働きがあります。お口の中を中和する緩衝能が低い方は、歯が酸にさらされる時間が長くなるため、虫歯になりやすいです。緩衝能による虫歯リスクの判定は、唾液をつけた試験紙の色でリスクを判定します。
<緩衝能による虫歯リスクの判定>
試験紙の色 | 虫歯のリスク |
---|---|
青色 | 低リスク |
緑色 | 中リスク |
黄色 | 高リスク |
唾液の中和する能力が低い方は、唾液の分泌を促すマッサージやうがいを取り入れましょう。
また、ダラダラ食べる場合や間食が多い場合、中和する時間が足りず、お口の中が酸性状態のまま維持されてしまいます。歯磨きだけでなく、食生活も見直しましょう。
唾液検査の流れ
唾液検査の流れは、以下のとおりです。
①唾液量・中和力の検査
5分間、味のしないガムを噛み続けたあとに、試験管(グラス)に唾液を出して分泌量を測定します。併せて、採取した唾液に試験紙をつけて、色の変化で唾液の中和力(緩衝能)を検査します。
②虫歯菌の数の検査
棒状の検査器具を舌につけて、舌の上にいる細菌の数を調べます。採取した検体を数日間培養することで、菌の数が多いかどうか判定します。
唾液検査を受ける前の注意は、以下のとおりです。
・検査前1時間以内に飲食・歯磨き・喫煙はしない
・検査前12時間以内に洗口液(マウスウォッシュ)は使用しない
・唾液の分泌量への影響を考慮し、検査直前の激しい運動はひかえる
・リップクリームや口紅は、検査時に落とす
・検査前に抗生剤を服用している場合は、事前に歯科医師へ相談する
唾液検査はどのような方に向いている?
唾液検査をしたほうがよい方は、以下のとおりです。
・自分で虫歯になりやすいと思っている方
・しっかり歯磨きしているつもりなのによく虫歯になる方
・効果的で自分に合う虫歯予防方法を知りたい方
・乳歯の虫歯が多いお子さま
・これから永久歯が生えてくるお子さま
唾液検査は、自分の虫歯リスクを知り、適切な予防法を身につけるための大切な手段です。虫歯になりやすく悩まれている方や歯を大切にしたい方は、唾液検査を受けてみましょう。
まとめ
歯科医院の唾液検査では、虫歯菌の数や唾液の中和力などを測定し、自分の虫歯リスクの高さを知ることが可能です。
唾液検査は、自分のお口の中の状態に合わせた虫歯予防の方法を身につけるために行います。きちんと歯を磨いているつもりなのによく虫歯ができる方や効果的な虫歯予防法を知りたい方は、ぜひ唾液検査をしてみてはいかがでしょうか。
唾液検査を検討されている方は、山口県長門市にある歯医者「田中歯科医院」にお気軽にご相談ください。